NO.9022:聖心女子学院 第二体育館 東京都港区 OMソーラー

POINT

「あるものを大切に」との思いに応え、自然環境を活かして実施された体育館の改修。耐震補強を目的とした改修計画に、自然エネルギーを積極的に活用する環境共生技術(OMソーラー)を取り入れ、新たな価値を生み出していくという先進的な提案。

設  計 → (株)竹中工務店
建物概要 → 敷地面積 58,640.51平米 / 建物延床面積 1,015.33平米
OM部分施工 → 相羽建設(株)
完成 → 2007年6月

耐震補強を施すとともに、
環境共生技術を取り入れて室内環境が改善された第二体育館

「あるものを大切に」との思いに応え、
自然環境を活かして実施された体育館の改修

都心にありながら豊かな緑に恵まれた東京都港区白金。おしゃれなショップが並ぶ目黒通りから奥に入ると、閑静な住宅地が並んでいます。穏やかな起伏のある通りを更に奥に進むと、1909年にチェコの建築家、ヤン・レツル氏(広島県産業奨励館、後の原爆ドームを設計)の手による正門が迎えてくれるのが、聖心女子学院です。
1908年にカトリック系の語学校として創立した聖心女子学院の白金キャンパスでは、現在、初等科、中等科、高等科の約1300人の生徒たちが、創立者、聖マグダレナ・ソフィア・バラの建学の精神に則り学んでいます。
キャンパスの起伏に富んだ広大な敷地には、チェコの建築家、アントニン・レイモンド設計による聖堂をはじめ、初・中・高等科の校舎、グラウンド、テニスコートなどがあり、それらの学び舎を守るように息づく木々の大きさからも、この土地の歴史の深さが窺われます。
このキャンパス内に、2008年、新たに創立100周年を記念したデュシェーンホールが加わりました。場所は敷地の北東端にある第二体育館と屋内プールの間で、1968年に建てられた屋内プールと、1974年に建てられた第二体育館の改修とともに、創立100周年の記念行事として計画されました。
記念ホールの設計は安藤忠雄建築研究所によるもので、円筒状の1、2階の上に、多面体の3階の一部がプール棟の上にかかるように建てられた、狭い敷地の空間を有効に活用した建物となっています。この記念ホールの新築工事に先駆けて行われたのが、プール棟と第二体育館の改修工事です。
「改修の大きな目的は耐震補強でしたが、単に耐震工事というだけでなく、できるだけ生徒さんの学習環境を改善したい、という学院側の強い要望がありました。それもなるべく機械に頼らないで、自然の力を利用した環境改善をというものでした」とお話してくれたのは、プール棟と第二体育館の改修工事に携わった(株)竹中工務店東京本店課長代理・小林直氏です。
「既存の第二体育館は蒲鉾型の金属屋根で断熱がほとんどなく、夏に事前調査をした際、サーモグラフィーで見ると真っ赤になっていました。床下はコンクリートの土間の上にフローリングが載っているだけで断熱が無く、夏は暑く、冬は寒いという状況でした。」
既存体育館の現状を見た小林氏が学院側に提案したのは、もともとこの地にある木々の間を吹き抜ける心地よい風や、太陽の光、太陽の熱、それら自然のエネルギーを建築的な工夫によって建物に取り入れるというものでした。

環境共生技術を取り入れた提案をして付加価値を高める

 

「これだけ緑に恵まれていれば通る風も涼しいはずなのですが、既存の第二体育館には風の通り道に開口が有りませんでした。そこで開口を設けて風の通り道を作り、さらに屋根の軒から取り入れて温めた空気を床下に送り、床下から暖めるOMソーラーシステムの導入、また少ない水量でも清涼感が得られるミスト噴霧システムなど、考えられることすべてを提案させていただきました。」
可能な限り自然エネルギー利用を提案に盛り込んだという小林氏。しかし個人的にはOMソーラー導入は初めてで、OMソーラーが体育館で実績を出していることは知っていたものの、「新築ではなく改修なので建物の形状等に制約があり、それをどうクリアしてOMソーラーの導入につなげていくかが課題でした」と振り返ります。
「学院側にはつくっては壊すというのではなく、あるものを大事に使っていきたいというお考えがありましたので、既存のもので使えるものは使いながら、いかに効率よく集熱できるかというシミューレーションをしながら検討を重ね、費用対効果でベストの方法を探っていきました。」この自然エネルギーを積極的に活かして環境改善を図り、新たな価値を生み出していくという先進的な提案は、学院側からの高い評価を受け、工事の受注に繋がっていきます。
こうして2007年、デュシェーンホール竣工に先立って工事が終了した第二体育館の改修工事。新しいキャンパスの顔として、1988年に耐震工事が施された第一体育館とともに、生徒の運動技能や体力の向上に貢献しています。体育科教師、林田めぐみ先生は、キャンパス内にある二つの体育館を利用する生徒の様子について、次のように話します。
「第一体育館はヒーターが入っているので冬暖かかったのですが、OMソーラーが入った新しい第二体育館が出来てからは差がなくなりました。球技大会が1月にあり、今までは本当に寒くて辛かったのですが、OMソーラーが入ってからはすごく楽になりました。また夏は夏で暑い第一体育館に比べると、第二体育館はクーラーとまではいきませんが風が通って涼しく、とても助かっています。」
今回のOMソーラーをはじめとした自然エネルギーを活用した改修工事に携わった小林氏は、改修の前後で比較測定をし、その効果を検証しています。
「OMによる冬場の床暖房効果はもちろんですが、夏場も断熱により屋根からの複写熱が軽減されたことと、風通しが良くなったこと、OMによる排熱効果がある事等の複合的な理由で環境はだいぶ改善されました。もちろん自然エネルギーですので、お天気頼みという部分もありますが、補助的な手段として空調機を使い、OMソーラーと同じルートを使って冷暖房が出来るように考えています」といい、更に検証結果を踏まえて、「今回の改修工事で積み上げたノウハウを活かし、設計コンぺなどで積極的に環境共生技術を取り入れた提案をして、付加価値を高めていく努力をしていきたいと思っています」とことばを結びます。
社会に貢献する懸命な女性教育を理念に掲げた聖心女子学院。創立100年という歴史の1ページに、自然を活かし環境負荷を低減するという環境共生技術を取り入れた第二体育館が加わって、さらに次代へと繋がっていきます。

間取り

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